事例問題対策
より実務的な要素が強い事例問題は、当然に監査の実務経験のない受験生には厳しいものがあると思いますが、答案としては純粋な理論問題に具体的な事例の状況を織り込んでいけばいいと割り切ってください。むしろ、事例問題の問いがどの理論問題に結びつくかに気づけるかが肝になってきます。本試験会場でひらめくかどうかにかかってくるですが、ひらめきやすくなるであろう勉強方法を提案したいと思います。
まず、監基報に記載されている具体例に目を通しておきます。例えば、事例の被監査会社の状況からリスクを指摘させる頻出問題の対策としては、監基報315号の付録2の「重要な虚偽表示リスクを示唆する状況と事象」を確認しておきます。監基報本文にも「例えば、~」「~の場合等、~」と具体例が記述されている箇所があるので、監基報を基にした実施論や報告論の答案を覚えていく際に具体例をメモする等しておくとイメージがつかみやすくなります。短答式試験対策の段階から具体例が確認できているとより効率的です。また、「リスクの内容の指摘→関係する虚偽表示の指摘→具体的リスク対応手続きの指摘」という問題の流れも頻出ですから、この組合せのパターンをより多く、より具体的なものを用意して覚えておくと良いでしょう。全く同じようにではなくても「よく似たあのパターンかな?」と気付けるだけでも、答案が書きやすくなると思います。
もう一つの対策方法として、過去問の事例問題を解いてみることをお薦めします。何年分かまとめて解いてみると、よく似た筋道で出題されていることに気付くと思います。また、過去問で与えられた資料の注意すべきポイント(例えば、被監査会社のワンマン経営ぶりや月次損益の大きな変動、過年度に発見した不正など)は、実際の本試験問題でも確認すべきポイントになるはずです。
最後に、過去問の模範解答を参考にする際の注意点として、監査論の、特に事例問題の解答には「唯一絶対の正解」はないと考えてください。もちろん、試験委員が期待している解答はあるでしょうが、それとは違う答案であっても、問われたことに筋道立てて適切に応えられていたなら0点ということはないはずです。問題文に「具体的に」とあれば、できるだけ具体的に、「一般論で」とあれば、より広く限定的にならないように、と気を遣って誠実に答案作成するように努めましょう。