財務会計論の短答対策

出題傾向

短答式試験の財務会計論は、試験時間2時間で、個別論点が22問(各問8点)、総合問題から6問(各問4点)が出題されます。個別論点では計算問題と理論問題がおおよそ半分ずつ出題されます。総合問題は連結会計の計算問題です。全問解ききるだけの時間的余裕はなかなか無いでしょうし、難しい問題、場合によっては解かない方が良い問題もあれば、1分かからずに解けてしまう問題もあるので、解くべき問題を見極める能力も必要になってきます。「何分で解けなかったら次にいく」という方針を立てておくのも一つの方法です。合格の目安が65%~70%ということは、個別問題でも6問~7問、総合問題でも2問~3問くらいは間違えたとしても、まだ安心圏ですから、さくさく次に進めましょう。一見簡単そうに見えて実は難しい問題に無駄に時間をとられて、他の簡単な問題に時間を回せずに失敗した、なんていう話も耳にします。時間配分や下書きの見直しのし易さ等も意識しておく必要がありそうです。


 

個別論点~計算問題対策

計算問題では多くの場合、特定の財務諸表項目の金額、または、2つ財務諸表項目の金額の組合せが問われます。例えば、リース取引に関する資料が与えられて、当期におけるリース資産の残高を求める、というような問題です。問題数が多いため、主要論点はほぼ網羅的に出題されますから、ヤマ当てのようなやり方は功を奏しません。特定の分野に偏らずに対策する必要がありそうです。

出題形式や資料の与えられ方には大きな変化はなく、過去問に酷似した出題も見受けられますから、過去問を解いてみるのは有効だと思います。ただし、問題自体は公認会計士・監査審査会のHPに、過去の本試験問題として公表されていますが、解答・解説は専門学校が出版している過去問集等に頼ることになります。また、2002年以降からどんどん公表されてきた会計基準が基礎となった出題も多く、会計基準適用指針に付録として収録されている設例も参考になります。もちろん、独学で公認会計士試験にチャレンジする方は稀で、何らかの形で専門学校に頼ることになるでしょうから、専門学校選びを間違えなければ、過去問や会計基準の設例等は教材として入手できているはずです。

では、入手した教材への取り組み方です。教材にもよりますが、1問1論点のような問題は、一度処理を理解したならもう取り組む必要はないと考えます。本試験と同レベルの、1問の中に複数の論点が含まれている問題を、できれば条件が少しずつ替えて設定してある類題を何問かまとめて解くことをお薦めします。本試験で得点したい問題は、標準的な問題と少し応用論点が含まれている問題なので、処理を知らない訳ではないはずです。では、なぜ間違えるかと言えば、複数の処理の中での選択を誤った時であることが多いのです。1問1論点の問題は、正しい処理ができるだけの資料しか与えられなかったりするので、「なんとなく資料の数値で計算したら正解」になりがちです。どの処理もできるだけの資料が与えられてるなかで「この指示とこの条件があるからこの処理になる」と意識的に選択できるようになるには、ある程度のボリュームのある問題を解く必要があります。また、類題をまとめて解くことで「この指示とこの条件が違うから処理がこう変わった」という発見もしやすくなります。


 

個別論点~理論問題対策

理論問題は、4つの記述の中から正しい2つの記述の組合せを選択する形式です。細かすぎる規定や実務的すぎる記述が出題されることもありますが、多くは会計基準や適用指針の基本的な処理に関わる記述ですから、4つの記述のうち3つまで正誤が判別できればよい、と考えるならば、そこまで範囲を広げて勉強する必要はなさそうです。

効率よく理論対策をするなら、まずは計算対策と組み合わせていきましょう。財務会計論の勉強は計算から入る場合が多数派でしょうから、既知の計算処理が会計基準ではどんな風に表現されているかを確認していくだけで、計算関連の記述の正誤は判別できるようになるはずです。次に、その処理の条件や場合分けの部分も確認していけば、計算処理の選択の指示も読めるようになって一石二鳥です。例えば、資産除去債務を計上するときの割引計算で適用する割引率の選択は、会計基準では以下のように記述されています。下線部に注目して読んでみてください。

割引前の将来キャッシュ・フローに重要な見積りの変更が生じ、当該キャッシュ・フローが増加する場合、その時点の割引率を適用する。これに対し、当該キャッシュ・フローが減少する場合には、負債計上時の割引率を適用する。なお、過去に割引前の将来キャッシュ・フローの見積りが増加した場合で、減少部分に適用すべき割引率を特定できないときは、加重平均した割引率を適用する。

さらに余裕があれば、計算処理の根拠の部分にも手を広げましょう。会計基準の後半「結論の背景」には、会計基準設定にあたり「なぜこの計算処理が採用されてこの計算処理は採用されなかったのか」という理由が説明されています。ここから論文式試験の理論問題が出題されることも多いため、論文式試験対策にもなって長期的には効率的です。会計基準に採用されなかった計算処理の理由まではやり過ぎでも、既知の計算処理の採用理由くらいは確認しておいて損はありません。例えば、資産除去債務の資産負債の両建処理の理由が以下のように記述されています。

~このような会計処理(資産負債の両建処理)は、有形固定資産の取得に付随して生じる除去費用の未払の債務を負債として計上すると同時に、対応する除去費用を当該有形固定資産の取得原価に含めることにより、当該資産への投資について回収すべき額を引き上げることを意味する。すなわち、有形固定資産の除去時に不可避的に生じる支出額を付随費用と同様に取得原価に加えた上で費用配分を行い、さらに、資産効率の観点からも有用と考えられる情報を提供するものである。


 

合問題対策