令和元年改正会社法~ポイント解説No.6
「社外取締役」に関する改正を紹介します。有価証券報告書提出会社である監査役会設置会社(公開会社かつ大会社に限る)は、社外取締役少なくとも1人以上の設置が義務づけられました(改正会社法327条の2)。
改正前は、上記の会社が社外取締役を設置していない場合には、定時株主総会でその理由を説明する義務がありましたが、今回の改正で設置が義務づけられました。
監査役会設置会社(公開会社であり,かつ,大会社であるものに限る。)であって金融商品取引法第二十四条第一項の規定によりその発行する株式について有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならないものは,社外取締役を置かなければならない。
改正会社法327条の2
また、「社外取締役」に一定の業務執行を委託できる旨が明記されました(改正会社法348条の2)。
「社外取締役」が会社の業務を執行すると社外性が失われて社外取締役の要件を満たさなくなります(会社法2上15号イ)。このため、改正前は、MBOのように業務執行者と会社との利益相反が生じる取引において、社外取締役がその取引の公正性を担保する役割を十分果たすことができないという問題がありました。そこで、「社外取締役」に会社の業務執行を委託するための要件・手続きを規定し、この規定に則った業務の執行は「会社の業務を執行した」ことにはならないことが明確にされました。
委託できる業務は、「会社と取締役(指名委員会等設置会社の場合は執行役)との利益が相反する状況にあるとき、その他取締役(指名委員会等設置会社の場合は執行役)が当該株式会社の業務を執行することにより株主の利益を損なうおそれがあるとき」とされ、具体的には、MBOやキャッシュ・アウト、親子会社間取引などが想定されます。抽象的に委託できるとすることは社外性を損ないかねないので、具体的な事由が発生した都度、取締役の決定または取締役会決議により委託する業務について決定されます。これは義務ではないので、社外取締役ではなく利益相反取引の当事者でない他の取締役が業務を執行することも可能です。
1 株式会社(指名委員会等設置会社を除く。)が社外取締役を置いている場合において,当該株式会社と取締役との利益が相反する状況にあるとき,その他取締役が当該株式会社の業務を執行することにより株主の利益を損なうおそれがあるときは,当該株式会社は,その都度,取締役の決定(取締役会設置会社にあっては,取締役会の決議)によって,当該株式会社の業務を執行することを社外取締役に委託することができる。
2 指名委員会等設置会社と執行役との利益が相反する状況にあるとき,その他執行役が指名委員会等設置会社の業務を執行することにより株主の利益を損なうおそれがあるときは,当該指名委員会等設置会社は,その都度,取締役会の決議によって,当該指名委員会等設置会社の業務を執行することを社外取締役に委託することができる。
3 前二項の規定により委託された業務の執行は,第二条第十五号イに規定する株式会社の業務の執行に該当しないものとする。ただし,社外取締役が業務執行取締役(指名委員会等設置会社にあっては,執行役)の指揮命令により当該委託された業務を執行したときは,この限りでない。
改正会社法348条の2