令和元年改正会社法~ポイント解説No.1
令和年度改正会社法について、公認会計士試験対策として必要なポイントを紹介していきます。初回は「電子提供制度」についてです。
「電子提供制度」とは、株主総会資料(株主総会参考資料、計算書類、事象報告など)をインターネットを利用して電子的に提供するものです。改正前は、株主総会資料は株主総会招集通知と共に、総会の2週間前までに株主に書面で送付する必要がありました。これに対して、国際的に株主総会資料の電子化が進んでいること、書面で用意することの環境負荷の大きさ、株主総会の開催が6月下旬に集中するこ(会社法299条1項、301条1項)とから議決権行使に十分な時間が確保できないとの機関投資家の指摘などを背景に、導入された制度です。以下に制度の概要を整理します。
- 対象となる株式会社の範囲:振替株式を発行する会社(=上場会社)、上場会社以外も定款の定めにより導入可能(定款変更が必要)
- 期間:株主総会の3週間前までに電子提供措置を開始~株主総会日後の3ヶ月間
- 電子提供制度の対象となる事項:会社法298条1項各号に掲げる事項(株主総会の日時・場所、総会の目的である事項、書面投票・電子投票ができるときはその旨)、株主総会参考書類の記載事項(議案など)、議決権行使書面の記載事項(株主の氏名・名称、行使できる議決権数)、計算書類・事業報告、連結計算書類(会社法上の大会社かつ有価証券報告書提出会社のみ)、株主提案にかかる議案の要領
「電子提供制度」を導入しても、株主総会招集通知は書面で用意することになります。電子提供措置事項は、原則として電子提供措置によることが強制されていますが、株主の氏名・名称、行使できる議決権数は記載される議決権行使書面は、他の株主からは閲覧できないようにするための技術的措置の観点から書面での提供が認められています。
株式会社は,取締役が株主総会(種類株主総会を含む。)の招集の手続を行うときは,次に掲げる資料(以下この款において「株主総会参考書類等」という。)の内容である情報について,電子提供措置(電磁的方法により株主(種類株主総会を招集する場合にあっては,ある種類の株主に限る。)が情報の提供を受けることができる状態に置く措置であって,法務省令で定めるものをいう。以下この款,第九百十一条第三項第十二号の二及び第九百七十六条第十九号において同じ。)をとる旨を定款で定めることができる。この場合において,その定款には,電子提供措置をとる旨を定めれば足りる。
一 株主総会参考書類
二 議決権行使書面
三 第四百三十七条の計算書類及び事業報告
四 第四百四十四条第六項の連結計算書類
改正会社法 325条の2
電子提供措置をとる旨の定款の定めがある株式会社の取締役は,第二百九十九条第二項各号に掲げる場合には,株主総会の日の三週間前の日又は同条第一項の通知を発した日のいずれか早い日(以下この款において「電子提供措置開始日」という。)から株主総会の日後三箇月を経過する日までの間(以下この款において「電子提供措置期間」という。),次に掲げる事項に係る情報について継続して電子提供措置をとらなければならない。
以下省略
改正会社法325条の3第1項
第一項の規定にかかわらず,金融商品取引法第二十四条第一項の規定によりその発行する株式について有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならない株式会社が,電子提供措置開始日までに第一項各号に掲げる事項(定時株主総会に係るものに限り,議決権行使書面に記載すべき事項を除く。)を記載した有価証券報告書(添付書類及びこれらの訂正報告書を含む。)の提出の手続を同法第二十七条の三十の二に規定する開示用電子情報処理組織(以下この款において単に「開示用電子情報処理組織」という。)を使用して行う場合には,当該事項に係る情報については,同項の規定により電子提供措置をとることを要しない。
改正会社法325条の3第3項
振替株式を発行する会社は、電子提供措置(会社法第325条の2に規定する電子提供措置をいう。)をとる旨を定款で定めなければならない。
改正振替法159条の2第1項